日本の水産業の現状と海外先進事例の分析

プロジェクト概要

世界の水産需要拡大や豊富な水産資源、さらには技術力があるにも関わらず生産量減少・輸入超過に陥っている日本の水産業は、「産業化」の可能性を秘めている。ノルウェーの先進事例の分析が「産業化」のヒントになると考えられる。

世界の水産需要
世界の水産需要は、アジア地域を中心に急増しており、今後はアフリカ地域でも需要の増大が予想されている。世界最大の水産需要国である中国では、食生活の変化によって肉類と魚介類の消費が伸びており、2030年頃まで続く人口増加と相まって、水産需要のさらなる拡大が見込まれている。一方、日本の水産需要は1989年をピークに減少しているものの、1人あたりの需要は依然として世界の中でも高い水準にある。また、「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたこともあり、「和食」の人気が世界各地で広がっており、2006年には約2.4万店だった日本食レストランが、2015年には約8.9万店まで増え、魚食文化の浸透につながると考えられる。

 

世界の水産供給
需要拡大にともない、世界の水産供給量も増加し続けている。資源保護の観点から漁獲量は横ばいで推移している一方で、技術の進展にともない養殖量が1990年代から拡大している。世界銀行は、2030年までに食用魚の62%が養殖で生産されると予測しており、立地を選ばない陸上養殖を中心に今後も養殖業は発展していくと予想される。このような世界の動向に反して、日本の水産業は「産業化」による効率的な生産ができておらず供給減少が起きている。

 

日本の水産業の現状
日本は、領海と排他的経済水域を合算した面積は世界第6位であり、多様な魚種に恵まれた北西太平洋は世界の漁獲量の27%を占めている。本来、水産資源が豊富であるにもかかわらず、魚介類自給率は2015年に59%まで低下しており、136億ドルの輸入超過に陥っている。
その原因として、小規模経営の漁業者が多く漁船の老朽化がすすんでいること、漁業者の減少と高齢化、養殖魚の餌となる魚粉の価格高騰と養殖業の停滞、漁獲枠の未整備による資源量減少等が挙げられる。

 

先進的なノルウェーの水産業
温暖なメキシコ湾流と雪解け水によってサーモンの成長に適したフィヨルドを擁するノルウェーは、水産業の先進国である。魚種は少ないものの、水産業の輸出額は約1.4兆円にまで成長している。ノルウェーの水産業における「産業化」の成功要因は①漁獲量の確保、②養殖業の効率化、③効果的な販売である。

漁獲量の確保においては、収集したデータを基に隣国との協議を経て個別の漁船に漁獲量を割り当てるIQ方式を導入している。これによって、漁業者は市場で高く売れる成魚のみを選別して漁獲し、幼魚の保護と生産性の向上につながっている。

養殖業の効率化においては、先進技術による養殖場のモニタリング、飼料の自社生産とセンサーを活用した給餌の最適化等の手法が取られている。例えば、ノルウェーの水産企業トップのマリンハーベスト社は、世界シェアの約18%を占め、高い営業利益率を誇っている。同社は、次世代の密閉型養殖プラントを開発しており、陸から繋いだチューブで給餌から収穫まで完了するシステムを構想している。

効果的な販売として、ノルウェーでは漁業販売組合によるネットオークションが活用されている。漁業者は船上からオークションに参加し、落札した加工業者等の最寄りの港に寄港して流通過程を効率化している。リアルタイムにオークションが開催されることで、消費者に短時間で鮮度の高い魚が届けられている。また、輸出の拡大は、国が主導するマーケティングによって実現されている。水産物輸出額の0.75%に相当する輸出税を原資として運営されているノルウェー水産物審議会は、世界54か国の販売データベースを構築し、緻密な輸出戦略を立案している。

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