【スタディ】「配電ライセンス制度」の導入経緯と展望

【スタディ】「配電ライセンス制度」の導入経緯と展望
プロジェクト概要

電力ネットワークの強靭化強化のための「配電ライセンス制」の新制度の設定についての背景、目的、事業参入における将来像等を検討した。

導入背景
令和元年9月5日に発生した台風15号は関東広域に甚大な被害を与えた。これに伴い約93万戸の停電が発生し、特に千葉県内では送配電設備の被害が大きく、復旧作業に時間を要した。以上の反省から、電力ネットワークの強靭化によるレジリエンス強化を目的として、災害に強い分散型グリッドの推進に際して「配電ライセンス制」が討議されることとなった。​

制度概要
大手電力会社によって一体運営されてきた「発電」、「送電」、「配電」、「小売」のうち、「配電」に関する系統運用権をライセンスとして他社に開放する制度である。新規参入企業は、経理的基礎、事業の確実性等、一般送配電事業者と同様の規律が課せられると同時に、社会コストの増大を防ぐという観点から適格性を確認される。具体的基準については2021年「持続可能な電力システム構築小委員会」の中において検討が予定されている。送電託送料金における利益について、一般送配電事業者は総括原価方式により決定される一方、配電ライセンス制で参入した配電事業者は独自に利益を設定する方向で検討されている。つまり配電事業者は配電設備の維持運用費用を抑えることで利益を確保することができ、配電事業者には積極的な運用コスト削減へのインセンティブが付与される仕組みとなっている。

事業参入における将来像
配電事業参入初期においては需給計画の作成や系統操作、託送関連業務等、配電業務の大半を元々運用していた一般送配電事業者に委託することが前提として制度設計が進められているが、最終的には配電事業について新規配電事業者が独立して運用できるように配電事業者の技術やノウハウを蓄積させていく必要がある。最終的には配電事業者が新規再生可能エネルギー電源を自ら制御することによって潮流の管理も行える状態を目指している。
配電事業者が系統を独立運用できるようになることで、平時から再エネ電源を有効活用しつつ、災害等による大規模停電時には周辺系統から独立したグリッドにおいて自立的に電力供給可能な面的なエネルギーシステムが構想されている。

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