【スタディ】日本の電力改革における電力需給調整市場の仕組み

【スタディ】日本の電力改革における電力需給調整市場の仕組み
プロジェクト概要

一般送配電事業者が電力供給の周波数制御・需給バランス調整を行うために必要となる調整力について、より効率的な需給運用の実現を目指すため、2021年4月より開設するエリアを越えた広域的な調整力を調達する「需給調整市場」について研究を行った。

調整力の正体と重要性
「調整力」は、一般送配電事業者(東京電力パワーグリッド等)が電力の需要(電力消費)と供給(発電)を最終的に一致させる際に使う供給力であり、系統周波数を維持し安定供給を果たす極めて重要な役割を担っている。電気は「ためられない(発電即消費)」特性を有し、一般送配電事業者は、時々刻々と変わりゆく需要と供給をリアルタイムに一致させている。そのためには、いつでも動かせるよう発電機をスタンバイさせておき指令に応じて出力を調整することや、予めDR(デマンドレスポンス)契約をしている需要家に電力の使用を控えるよう要請するなど、様々な方法で調整を行う必要がある。​​

広域的な調整力を調達する市場​
この調整力の調達について、これまでエリアごとの公募制となっており、調達コストは一般送配電事業者にとって大きな負担になっている。エリアを越えた広域での調達を実現することで、調達・運用の効率化と競争の活性化・透明化による調整力コストの低減が期待されている。更に、DR事業者や新電力等の新規事業者の市場参加拡大による、より効率的かつ柔軟な需給運用の実現も期待されている。​
それを背景に、2021年度より広域で調整力を取引する「需給調整市場」を段階的に開設し、公募制から市場制へと移行することになっている。需給調整市場では、調整力を商品とし、売手が発電事業者、アグリゲータ、買手が一般送配電事業者となる。​​

調整力の細分化
一口に調整力と言っても、調整対象となる需給バランスの不一致にはいくつか種類がある。それぞれの対象に対応するために、調整力に求める要件が細分化される。
一次調整力(応答速度が速い)から三次調整力(連続して供出できる時間が長い)まて、特定の能力を持つ調整力が求められている。

<需要予測誤差>​
小売電気事業者は、需要を予測することで需要計画を作成しているが、需要実績と完全に一致する計画を作成することができないため、予測と実績に差が生じる。これを「予測誤差」と呼ぶ。​

<再エネ予測誤差>​
FIT特例制度により実需給となる日の前々日などに想定された再エネ出力予測値と実績値との差が、<再エネ予測誤差>である。​

<時間内変動>​
実際の需要は時々刻々と変化し続けており、再エネの出力も時々刻々と変化している。仮に、予測と実績が30分平均値で一致していたとしても、30分以下の時間では細かな変動が生じている。これを「時間内変動」と呼ぶ。​

<電源脱落>​
電源が予期せぬトラブルなどで停止すること(=電源脱落)があり、このような予測不能なトラブルで生じた需要と供給の差に対しても調整力で対応する。

需給調整市場開設のスケジュール
応動時間の遅い三次調整力②から導入を行い、応動時間の速い調整力へ商品を拡大していく予定である。三次調整力②は2021年度から、三次調整力①は2022年度から、一次調整力・二次調整力①②は2024年度から運用開始する予定である。

三次調整力②運用の評価​
現在、先に取引を開始する三次調整力②について、中地域(中部・北陸・関西)を対象に2020年3月12日~3月30日の広域運用を評価した結果、調整力コストの低減効果が、エリア内で運用した場合と比較し、期間内での増減はあるものの、平均すると1日あたり1,300万円程度、合計で2.4億円程度の低減効果を確認できた。これは、自エリア内の火力発電や揚水発電等の調整力から、他エリアのより安価な調整力へ差し替えた結果によるものである。期待通りの調整力コスト低減効果を示した。​

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